「全体主義の起源Ⅰ 反ユダヤ主義」ハナ・アーレント

今日危殆に瀕しているのは、理解されるもの、それ故想起され得るものとしての歴史の存在である。なぜならば、事実が過去の、また現在の世界の存立を保証するものとして、否認し得ぬものとして尊重されることがなく、時に応じてあれやこれやの意見を〈立証〉するために論拠として利用され濫用されるというのでは、理解され想起されるということはもはや不可能だからである。